青山という場所柄、ファッションに興味のある留学生が
毎年数名入学してくるのですが、
そんな生徒さんは初日からひとめでわかります。
なんせ頭の先からつま先まで
ビシッと個性あふれる装いでやってきますからね。
それはもう見事なもんです。
今日は、そんな留学生のファッションについてのお話です。
台湾からやってきたPさんの定番は
少女漫画から飛び出してきたようなフリフリドレス。
感心するのは毎日それが続くこと。
1日たりとも「寝坊してどーでもいい」恰好をしてきたことがないんです。
きちんと巻いたヘアスタイルに
完璧にコーディネートされたワンピースやエプロンドレス。
キュートなタイツにヒールのある靴。
雨の日は傘までフリルつき。
いやあそれは見事なものでした。
野次馬根性丸出しで「どこで買いましたか」と聞いたら、
「原宿で買いました」と。
いわゆるロリータファッションと言われるスタイルなのですが、
原宿には専門店があるんですね。
調べてみたら結構なお値段。
全身コーディネートとなるとさらに結構なお値段になってしまいます。
Pさんは数パターンを楽しんでいましたから
好きなものへの投資は半端なかったはず。
雨の日もテストの日も、同じスタイルを貫いていました。
中国からやってきたMさんの定番は黒と白。
美大を目指す彼は雰囲気からしてアーティストでしたね。
髪の毛も白というか銀というか、
全身の雰囲気にマッチした色に染めていました。
Tシャツだったりボタンつきのシャツだったり
アイテムは変わるのですが、
それでも色は黒か白。
よくよく見るとペンケースも黒。
バッグも黒。
しかもどこで買ったのか想像もつかないような個性的な形をしていました。
好奇心を抑えられず「黒と白が好きですか」と聞いてみたら、
「はい。黒と白しか着ません。 家の中も黒と白です。」ときっぱり。
有言実行?彼は2年間、黒と白の世界を貫き通していましたね。
結果ですか?
もちろん夢をかなえて美大へ進学しました。
上海からやってきたHさんはファッションビジネスを学ぶために来日しました。
彼女の定番はスカートやワンピース。
パンツスタイルは一度も見たことがありません。
ロングヘアをきれいに巻き、
上品なお化粧をして、
女性らしい柔らかい雰囲気をまとっていました。
同じ女性として美への関わり方を多いに反省した私は、
またまた師に教えを乞うごとく聞いてみました。
「いつもすてきなワンピースですね。 パンツははきませんか。」
「はい。絶対にはきません。わたしはスカートが好きです」とのこと。
さらに「9時以降は何も食べません。」
え、そうなんですね。
「お腹がすいたら、どうしますか。」
「がまんします。」
とこちらもきっぱり。
美しい洋服を着るためにウエストラインを維持しているのだそうです。
銀行業界からファッション業界へ転向するために
両親の反対をおしきって留学した彼女の強い意志を感じました。
まだまだ紹介したい生徒さんがいるのですが、今回はこのくらいにしておきます。
わたしはファッションで自分を表現できるのは
本当にすばらしいと思っているので、
こんな生徒さんが心からうらやましいです。
もちろん社会的にTPOに応じた服装をすることは
大人として当然必要なことですが、
そうでない場合や場所では、
みんな自由に好きなものを身に付けるのがいいなと思っています。
自由なファッションは心まで自由になると思いませんか。
来日したての留学生に原宿の感想を聞くと、ほとんどの人がこう言います。
「ニホン人は、好きな洋服を着ています。」
「ファッションが自由です。」
本音を言わないと揶揄される日本人ですが、
ファッションでは実はこんなふうに思われているんです。
自由って大切ですね。
「 日本人はすきなものを 着ています 」
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