おつきあいありがとうございます。 
今回で「海外の日本語」は最後の回となります。

「ゼンブオワッタラ コンコン シテクダサイ」 
え? コンコン?  
今、コンコンって言ったよね? 

ノックするジェスチャーでコンコンって言いましたね。 
いきなりここでまさかの擬音語。

至福のスパの時間のはずなのに、
思わず日本語教師脳が働いてしまう自分自身につっこみを入れつつ、 
観光業の日本語っておもしろいなあとほくそ笑んでしまいました。


今日は、そんな海外の日本語のお話、 最終回です。

 

エステシャンたちの日本語は指示と気遣いがほとんどです。  
Cさんたちの日本語はいわゆる片言なのですが、
絶対的な場面があるので確実に意図が伝わります。


「着替えてください」
「アクセサリーはここに入れてください」
「お手洗いはこちらです」 など、
多くはお客様にしてほしい指示を出しています。 

マッサージの途中は
「痛いですか」
「強いですか」
「寒いですか」
「熱かったら、言ってください」など
お客様への気遣い。
質問はとにかくシンプル。

対する答えはほとんどが
「大丈夫です」 

もし日本語便利語ランキングなるものがあるとしたら、
まちがいなくこの「大丈夫」が
ダントツで1位になるのではないでしょうか。 
「OK」とか「いいです」とか「はい」を凌駕する勢いで
圧倒的に「ダイジョウブ」が伝わると思われます。

ということで私も「ダイジョーブデス」を連発。


ときどき「ちょっと熱いです」 
これは石が本当に熱かったので、かなり必死に訴えました。 
また、「ちょっと寒いです」 
これも必死に。 
なんせお部屋の冷房は
19度に設定してありましたからね。

  
「熱い」「痛い」と訴えると
プロのCさんはすぐさま要望に応えてくれますので、
ここでのコミュニケーションも確実に成立。

「お手洗いは大丈夫ですか」
「ダイジョウブです」  
これが何度繰り返されたことか。 

  

そして冒頭の「コンコン」。 
部屋で着替えが終わったらドアをノックしてください。 
廊下で待っているCさんに伝えるためです。 
なぜそこだけ
「ドアをノックしてください」
ではなくて
「コンコンしてください」
と彼女たちに教えたのだろうか。

彼女たちに日本語を教えた日本人の意図を想像してみました。  
単に発音が簡単だったのか。 
ノックするというのは、本来は部屋の外から中に向かって行う行為なので、
部屋の中から外に向かってするのはおかしいと思ったのか。

「ドアをたたいてください」は乱暴すぎますし、
「呼んでください」では声が届かない場合があるのかもしれません。

うーむ。
いずれにせよ、私は「コンコン」したので
無事にCさんにお着換え終了を伝えることができたのは確かです。

  

ところで1点だけCさんにしてはいけないことがあります。 
それは場面以外のことやスパの内容の詳細についての質問です。 
まちがっても「どこで日本語を勉強しましたか」とか
「だれに習ったんですか」とか
「このパックはニキビに効きますか」などのやりとりを期待してはいけません。 
その場で急に新しいことを言うとCさんは困ってしまいますからね。 
細かいことは事前に日本語のアンケートで伝えておくのがマナーです。  
その後はまないたの鯉になってしまいましょう。

 hana

「オワッタラ、 コンコン シテクダサイ」