「〇〇〇サマ、ヨウコソ。 
ワタクシガ ゴアンナイイタシマス。」 

コロナ禍明けの久しぶりの海外。 
リラックスのために日本を脱出したはずなのに、
異国で出会った日本語に興味が止まらず
日本語教師魂丸出しの珍道中となりました。 
今日は、そんな海外の日本語のお話です。

 
異国の南の島の空港。 
きれいな日本語で出迎えてくれたのは現地の日本語ガイドさん。 
漢字とカタカナで会社名が書いてあるシャツを着ていました。

  
空港お迎え時の彼の日本語は「かんぺき」でした。 
「オニモツハ コチラだけですか。」
「オモチシマス」
「クルマまでチョットあるきます」などなど、
おそらく暗記しているであろう日本語の文章がスラスラと出てきます。 
いざ車に乗ってハンドルを握っても、
「今から、〇〇に向かいます。 
2時間くらいかかりますが、途中でコンビニによりたいですか」 
と流れるように日本語が出てくるのです。

  
しかも「あれ? 今なんて言った?」
と聞き返す必要がまったくないのです。 
聞き取れない原因はほとんどがイントネーションやアクセントなど
発音の問題なのですが、
Aさんの日本語はとても聞き取りやすく、すーっと耳に入ってきました。

  
ロングドライブのあいだ、Aさんのガイドは続きます。 
通貨のこと、治安のこと、Wifiのこと…。 
実は初めての国ではないのでほとんどは知っている内容でしたが、
Aさんの説明に思わず聞き入ってしまうほど彼の日本語は流暢でした。

  
「〇〇に悪い人はいませんが、最近は、観光客が多いので悪い人もいます。 
パスポートなど大切なものは持ち歩かないでください。 
でもホテルで大切なものがなくなってもホテルは責任をとってくれません。 
だからセーフティボックスに入れてください。」 
などなどAさんの日本語はとてもシンプル。 簡潔。 
伝えたいことを簡単に確実に伝えています。

敬語はさりげなく。
 「ご予定を確認させていただきます。」
「お困りのことがありましたら、こちらにご連絡ください。」

 

こうなると聞くしかありません。 
「Aさんは日本語をどこで勉強しましたか。」 

Aさんによると、高校卒業後、地域の日本語学校に週に2,3回通ったとのこと。 
1回の授業は90分なので、まとめると3か月くらいかなあと。 


え、それだけ? とびっくりなのです。 
他にも言語はあったのにどうして日本語を選んだの? 
日本人の先生? 教科書は何だった? 
と聞きたいことは山盛りなのですが、
家族の白い目が私を制するのでぐっと言葉を飲み込んでしまいました。

  
ならば日本語以外のことを聞くのはよかろうと
「休みは何日あるのか」
「日本人だけをガイドしているのか」
「何年ガイドをしているのか」などなど
もはや好奇心丸出し。 
相変わらず家族の白い目が痛い…・。

  
コミュニケーション力抜群のAさんはどんな質問にも笑顔で答えてくれましたよ。 
しかも 「なんか…」「えーっと」とうまい具合にフィラーも入れつつ。 

  

そんなAさんですが漢字は読めません。 
読む必要がないと言ったほうがいいかもしれません。 
ひらがなやカタカナが読めるかどうかもわかりませんが、
彼の仕事上、なんの問題もありません。

旅先では公用語は英語。 
日本語を「話してくれる」ガイドさんがいるだけでも御の字なのです。 
わたしたち日本人はこのことをとても謙虚に捉える必要があると思いました。 

 
言葉を学ぶって何だろう。 
言葉を話すって何だろう。 
コミュニケーション力って何だろう。 

深くしみじみと考える旅となりました。

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「オワスレモノハ ゴザイマセンカ」