「え、また? リピート! 」

わたしたちの学校では3か月に1回、大きな定期試験があります。 
その成績と日ごろの小テストの結果を合わせて

次のクラスへ進級できるかどうかを決めています。
 
けれども、たまに、何度もいちばん最初の初級クラスを
リピートする留学生がいるんです。 
点数がとれないのは勉強方法に問題があるかもしれません。 

でも、そういう問題ではなくて、
3か月たってもまったく日本語が言葉として身についていないケースがあります。 
あれ、もしかして、日本語が合わない? 

今日は、そんな日本語学習についてのお話です。


子どもは生まれた場所で話されている言葉を自然に身に付けます。 
つまり、動物としての人間は
もともと言葉を自然に身に付ける力を持っているのだと思います。 
ところが、勉強したからといって
外国語は必ずしも身に付くというわけではないように思うのです。 

特にこの「勉強した」という部分が大切です。 
日本語学校は
24時間のうちわずか4時間だけ。
繰り返しますが
留学したといっても学校で日本語を勉強するのは
4時間だけなのです。

  
毎日宿題を出したり、
何度も漢字の小テストをしたり、
わたしたち教師は学生が日本語を覚えられるように
いろいろと工夫をするのですが、
それでもなかなか覚えられない人もいます。 

耳で学習してきたせいか字が読めない学生に対しては、
カードゲームで遊びながら学ぶ方法を考えました。 
それでもひらがな、カタカナが3か月たっても判別できない…・。 

毎日教科書の音声や教師の日本語を聞いて勉強しているのに、
なかなか発話につながらない人もいます。 

簡単なインタビューに答えられない。 
日本語が出てこない。 
せめて単語が出てくればよいのですが、そもそも質問が通じない。 
理解できる語彙が少ない。 

  

第二言語習得を学んでいる方は、
大量のインプット、
しかも質のよいインプットが必要だという理論をご存知かと思います。 
そのインプットがアウトプットにつながって、
いわゆる外国語が話せる状態になるという考えです。

  
私は研究者ではないので正確なデータはありませんが、
これまで日本語をどれだけ聞いていたか、
どれだけ日本語に触れてきたかが大きくかかわっているように思います。 
それに加えてどれだけ日本や日本語、日本文化や社会に
興味があるかも大切なポイントかなと。

 

日本のアニメやドラマが大好きで、
字幕付きではあるけれども日本語そのものにずっと触れていた。 
日本が好きで何度も旅行に来ていたので日本語で会話をしたことがある。
よくわからないけれど日本語の映画を見ていた。
このようにたくさんの経験があると、
留学がきっかけとなって
日本語の実力は安定して伸びていっています。

一方で、突然日本への留学を思い立って
突然日本語を勉強した場合は、
なかなか日本語の音声が体に入っていかない。

はじめての外国語。 
はじめての音、
発声、
発音。 
学歴や仕事のために日本語を勉強
「しなければならない」
という外発的動機だけを持っている学生は、 
日本語に慣れるまでに時間がかかっています。

 

耳に慣れ親しんでいた言葉を勉強すると、
その言葉が立体になるのかもしれません。 
文字とつながり、
発話とつながる。


反対に聞いたことがない言葉を勉強する場合は、
頭だけで理解しなければならないので
身に付くまでに時間がかかるのかなと考えています。 

 

私事ですが、子どものころ英語の歌を聞いても
意味がわからなかったので音だけで真似していました。 

「えびしゃららら?」 

ん? えび? 海老?   

この歌がわかりますか?   


答えは 「every sha-la-la-la」ですよね。

ebi
                                                                        
「 エビがevery になる日 」