「行きたくありません。」
「休んでもいいですか。」
行事の案内をすると、
数名は必ずこんなふうに言ってきます。
あなたがもしクラス担任の先生だったら何といいますか?
「学校の『きまり』ですから参加しなければなりません」と規則で説明しますか。
「これも授業ですから参加しなければ欠席になりますよ」と
出席率の重要性から説得しますか。
わたしたちの日本語学校は
行事も授業と同じくらいに大切だと考えていますから、
1学期に必ず何らかの行事があります。
今日は、そんな日本語学校の行事についてのお話です。
日本には四季があってそれぞれに行事があります。
また月ごとにもさまざまな行事があります。
わたしたちは自然にそれを身に付けたかのように思っていますが、
実はそれは錯覚で、幼いときからそれを繰り返し体験してきたから
何となく体に染みついているのではないでしょうか。
もし、幼稚園や小学校で何ひとつ行事を体験してこなかったら、
まったくわからなかったと思うのです。
家庭でお正月や子どもの日をお祝いしたり、
お盆やお彼岸を体験したりしたからこそ、
年中行事や儀礼や習わしといったものが
生活に結び付いていることを自然に実感するのだと思います。
日本語学校の行事は
必ずしも季節や日本文化に基づいたものだけではなく、
バス旅行楽しもうだったり、BBQでみんなでいっしょに食事をしようだったり、
単純に遊ぼうという企画もあります。
教室を飛び出して青空の下で日本語を話したり、
いつもはなかなか話すチャンスのない友人と言葉を交わしてみたり、
新しい発見がたくさんあるのが行事のよさだと私は思うんです。
なので、せっかくの行事に参加しないのは、もったいないなと思います。
もちろん集団行動が苦手だったり、
乗り物に弱かったり、
いろいろな理由があるのかもしれませんが、
そんな特別な理由は除き…・。
せっかく日本まで留学に来たのですから、
新しいことはまず体験してみてほしいと思います。
新しい場所、
そこで見る風景、
そこで出会う日本人。
新しい自分や新しい友人を発見するチャンスでもあります。
ずいぶん前に私たちは広い遊園地に行きました。
そこではBBQをしたのですが、
なんと薪から火を起こさなければならないという
ザ・サバイバル状態でした。
私はもちろん、先生たちもそうそう火を起こせません。
あたふたしていると、さっと火をつけてくれたのが男性の韓国人留学生でした。
さすがの経験者。
いつもはおとなしい生徒さんでしたが、
あっという間に薪と新聞紙を上手に積み上げ火を起こし、
火加減を調整してくれた姿に、
クラスメイトたちは拍手喝采。
教室ではわからない、
それぞれの生徒さんのすばらしい一面が見られるのも行事の良さですね。
おかげで私たちはとてもおいしく焼きそばやお肉をいただくことができました。
みんなで食べて、みんなで片付けるという
一連の流れを通して、
クラスのみんなと一層仲良くなれた気がします。
一方で、 みんなが片付けているのにまったく気づかない人もいます。
最後までゴミをきちんと片付ける人と、
さっさと遊びに行ってしまう人。
焼けたお肉を友人のお皿に取り分けてくれる人もいれば、
先に食べてしまう人もいます。
生徒さんの中には「先生、お先にどうぞ」と気づかってくれる人もいます。
教室外の行事を通して、私はいつもわが身を省みることになります。
私は、協調性、思いやり、気遣いの精神でちゃんとできているだろうかと。
立派な生徒さんの姿から、まだまだだなあとひとり反省会。
そして、まだそれに気づいていない生徒さんには、
ぜひ周囲を見て心で感じてほしいなあと思います。
留学を通して学ぶのは言葉だけではありませんよね。
人間力、いっしょに鍛えましょう。
「わたしは、行きたくありません!」
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