来日したばかりのころはだれでも希望と夢に満ち溢れ、
瞳をきらきらさせて学校にやってきます。
あこがれの留学生活。アニメで見た日本。
そこで生活できる喜びを全身で感じながら
日本語の勉強もいっしょうけんめい取り組みます。
それがずっと続いて希望の進学先に進めました
・・・・がもちろん理想なのですが、初級が終わった次のステップから
日本語の学習が大変になってくる生徒さんもかなりいます。
今日はそんな初中級の「壁」についてのお話です。
前回お話したとおり、初級は毎日新しいことを学んでいきますから、日々成長が感じられます。
自分でも「できるようになった」という実感が得られやすいのです。
なぜなら、たとえば初級の聴解は初級用に作られていますので
世間で耳にする日本語よりスピードも語彙もわかりやすいように
コントロールされているからなんです。
これはどの言語を学ぶときも同じですね。
語彙も抽象的な言葉はあまり出てきません。
ところが初中級レベルになると、少しずつ抽象的な語彙が出てきたり、
さまざまな副詞やオノマトペが出てきたり、
語彙の量が圧倒的に増えてきます。
たとえば、「優勝したい」から「優勝を目指す」。
「夢を言う」から「夢を語る」。
「新しい野菜」から「新鮮な野菜」。
「教室が静かです」から「教室がしいんとなる」などなど…。
「先生、難しいです」
「覚えられません」
「漢字が多いです」
特に非漢字圏の生徒さんから悲鳴のような声が挙がってくるのがこのレベルなのです。
ここで日本語の教科書についてお話しましょう。
日本語学校で使う教科書は基本的には日本語だけで書かれていますが、
語彙や文法の教科書では中国語やベトナム語などの訳がついているものも少なくありません。
ニーズに応じて続々と訳付きの本が出版されていますが、
圧倒的に多いのは英語、中国語、韓国語、ベトナム語です。
じゃあ、他の言語の学生はどうするの? となりますが、基本的にはありません。
つまり初中級以上になると、自国語で語彙を理解したかったら自分で調べるしかないのです。
本に載っている訳語が母語の生徒さんが学習時間という意味では有利になることは否めません。
訳語がない母語の学生は、訳語がある学生の2倍、3倍の時間をかけて学ぶことになります。
それでも英語ができる場合はずいぶん楽になりますね。
英語訳が助けになりますから。
ただし 第二外国語である英語で第三外国語である日本語を理解するという
2段階のステップを踏むことになりますが…・
さて話を戻しますと、初中級レベルでは漢字、語彙がぐっと増えるだけでなく、
文法も似たようなものが増えてきます。
「日本は時間に厳しいのに対して、私の国ではそんなに厳しくない。」という「対して」。
と、 「都会の生活は面白いことが多い反面、ストレスも多い」という「反面」。
日本語母語話者はこのふたつを無意識に使い分けていますが、
学習者は意識をして違いを理解しなければ使えません。
「父は厳しいのに対して、母は優しい」
「父は厳しい反面、母は優しい。」
これはどちらかが不自然な文となりますが、理由は何でしょうね。
留学生になったつもりでぜひ考えてみてください。
このような違いをおもしろいと思うか、面倒臭いと思うかで、
学習意欲がぐっと違ってくるように思います。
結局、初中級の壁はどうすればいいの? ってことですが、
身も蓋もない言い方ですが、
「学習時間を増やす」「繰り返す」ことでしか
語学学習は前に進めないのではないかと思います。
語彙力が語学力に比例するので
一気に集中して語彙を覚えるのも有効だと思います。
そのためには大量のインプットが必要です。
ぜひ積極的に好きなコンテンツを探してみましょう。
最後に一番大切なことは完璧を求めないこと。
70%、80%できたらさっさと次へ進みましょう!
「先生、難しいです💦」
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