みなさんはどんな卒業式の思い出がありますか。 
日本では幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学など節目ごとに卒業式がありますが、
日本語学校でも、もちろん卒業式を行います。 
わたしたちの学校では外部の立派な講堂をお借りして盛大に卒業式を行っています。 
今日はそんな卒業式のお話です。

 

担任の先生がひとりひとり名前を呼ぶと、卒業生は「はい」と返事をします。 
そしてひとりひとり檀上へ。 
校長先生から卒業証書を渡されると一礼をして下がります。
初めて日本語学校の卒業式に出席したときは、
これって小学校や中学校で見た風景と同じだなあとびっくりしました。 

卒業式の前は証書の受け取り方も練習するんですよ。 
小学校でやりましたよね。 
右手、左手、一礼という順番を。 
形が大切というわけではないのですが、
式典での作法を一度経験しておくことは留学生にとってよい経験になると思います。 

卒業式が近くなるとクラスでは練習が始まります。 
先生も名前を間違えないように呼ぶ練習。 
卒業式はフルネームですからね。
いつもは「テイさん」などとニックネームを呼びますが、
本番はミドルネームもファミリーネームも全部です。

 

多くの留学生はスーツで卒業式に臨みますが、中には民族衣装を着てくる生徒さんもいます。 
正装してくれるのはとても嬉しいですね。 
その日を特別な日だと認識して、大切に思ってくれる気持ちが嬉しいのです。 

  


日本語学校での生活は決して楽ではなかったはずです。 
住むところを探す、
契約する、
ガス電気などの手続きをする。
銀行口座を作る、 
送金手続きをする。 
はじめての一人暮らし。 
ラッシュの通学。 
家事と勉強。 
はじめてのアルバイト。 
毎日続く日本語の勉強。 
絶え間なくあるテスト。 
などなど…。 
自分で望んで留学したとはいえ、
その生活は想像以上に大変だったのではないでしょうか。 


一方でもちろん嬉しかったこともあるでしょう。 
憧れだったアニメの聖地巡礼もできて、
世界中から来た留学生と友だちになれて、
アルバイト先では日本人と仲良くなって、
日本語も話せるようになって、
JLPTも合格できて…。


そんなことがギュッとつまった2年間。 
こんなに密度の高い日々は、みなさん、これまでありましたか。

 

卒業式の日は、教師とスタッフが心を込めて作った
「卒業アルバム」の映像が流れます。 
1年間の思い出の写真が音楽とともに
大画面で紹介されると、会場は大興奮。 
春の遠足、七夕の浴衣、クリスマス会、書初めなどの季節の行事をはじめ、
授業風景や友だちとの何気ないひとときなど、懐かしい日々が映し出されます。 

留学生が大笑いしている傍で、
大粒の涙を流しているのは…・
はい…先生たちです。

 

日本語学校を卒業したら、みんなそれぞれの夢の舞台へ進みます。 
進学したり、就職したり。 
留学生は新しい世界へ飛び立つことが嬉しくて前だけを見ています。 
そう、それでいいんです。 
みんな前だけを見てくださいね。

日本語学校の教師はみなさんの夢がかなうように、そっと横でお手伝いするだけ。 
跳び箱の踏切板のように、
飛べるようになったらそっと姿を消します。 

ひとりの力で跳び箱が飛べるようになったみんなを見るのが、
私たちはほんとうに嬉しいんです。


ほんとうによくがんばりましたね。 

がんばれた自分に自信をもってくださいね。

これからが本番です。

前だけを見て進みましょう。
  

congraturation
「せんせい、右手からですか」