私たち日本人は西洋歴を採用してからというもの1月1日にお正月を迎えるのですが、アジアの国々の留学生は旧正月をお祝いしています。
1月下旬から2月上旬の旧正月の時期は日本は通常通り過ごしますから当然休みではありません。
ですから留学生はちょっぴり寂しいお正月を迎えなくてはなりません。
今日はそんな旧正月についてのお話です。
日本語学校に勤務するまでは、私にとって旧正月は遠い世界のことでした。
留学中に中国や台湾の友人が2月ごろにお祝いをしているのは知っていましたが、当時は英語圏のハチャメチャに明るい「Happy New Year!」形式が恰好いいと思っていたので、特に関心を持つこともなく単なる知識として「知っている」レベルで済ませてきました。
ところが、日本語学校では
中国や台湾、韓国、
ベトナム、モンゴルなどの学生たちが、
「今日はお正月です」
と言って2月に突然お正月モードになるではありませんか!
それでやっと、遅ればせながら世界を実感したというわけです。
「暦」が違う。
「時」が違う。
文化の多様性をこれほど如実に表しているものはないのではないでしょうか。
1年は13か月。
1年は354日。
このことを肌感覚で理解するのは難しいですよね。
さて学生たちは旧正月近くになるとソワソワしてきます。
「先生、母が帰ってこいと言うので帰国してもいいですか。」
「先生、親戚がみんな集まります。私は帰らなければなりません」
「おばあちゃんが待っています」
などなど、まああれやこれやと訴えてきます。
お正月を家族と過ごしたい気持ちはよくわかりますが、旧正月の時期は日本では普通の学期中ですから許可するわけにはいきません。
留学したからには留学先の暦を優先するように諭します。
それでも時々
「おばあちゃんが入院しました」
「おじいちゃんが病気なので」
とかなり眉唾物の理由をつけて、
何としてでも帰国しようと試みる
強者もいます。
あるいは旧正月の時期に結婚式も行われるらしく、慶弔休暇を使って帰国するケースもあります。
まあ、こちらは証拠書類があるので正々堂々と帰国することができるのですが…。
学生たちのフォローをするとすれば、アジアの国々の家族のつながりは私たち日本人の想像を超えているのは確かだと思います。
世界中に散らばった大きな家族が集まる大切な時が旧正月の日々なのです。
年長者を大切にしますから祖父母に顔を見せる意味もあるのでしょう。
成人した若者がお正月に必死で親元に帰ろうとすることを、ある意味うらやましく感じるのも事実です。
日本人のお正月はどうでしょうか。
家族、親戚がそろってお正月をお祝いする風景が年々なくなっていくように思えます。
故郷で祖父母や両親、親戚とお正月を祝うためだけに、高い交通費を払って満員の列車や飛行機に乗ってわざわざ帰省するのはシンドイことなのです。
都会の生活が忙しくなって、だんだん帰れなくなる場合もあります。
核家族化が進み、親戚ともつきあいがなくなり、お正月は集まるものという発想自体が薄れてきているのではないでしょうか。
「みんなでギョーザを作って食べました」
「友だちといっしょに食事をしました」
「友だちとずっとお酒を飲んでいました」
帰国できなかった学生たちは、それぞれ異国での旧正月をたくましく過ごしています。
帰れないからこそ、故郷のすばらしさや家族の大切さに改めて気づきます。
家族と会えない分、そばにいる友人の温かさ、優しさが身に沁みるんですよね。
日本で感じた寂しさは、必ずあなたの力になる。
あなたの優しさになる。
あなたの強さになる。
「せんせい、帰ってもいいですか。」
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