私費留学生はさまざまな場面で「経費支弁者」について尋ねられます。
つまり、あなたの留学費用はだれが責任をもって支払いますかという質問です。 
確かによその国に留学するとなると、渡航費や学費はもちろん
生活費やいざというときの予備費など膨大なお金がかかりますから、
経済的な信用は大切ですよね。

今日はそんな経費支弁者についてのお話です。

              

 わたしたちが小学生の時から学校に提出してきた書類の中に、
必ず「保護者」という項目があったと思うのですが、
多くの家庭では父親の名前を書いていたのではないでしょうか。
私自身の記憶では、学校からのお便りを読んで必要なことをしてくれるのは母親でしたが、
保護者の欄には常に父親の名前を書いていたように思います。
おそらく母親としては、世帯主でもあり一家の大黒柱である父親が
子どもにとっての社会的な責任者であるという認識があったのだと思います。

その一方で私は疑問を感じていました。
もし学校から呼び出しがあったとしても、
私の日常を知らない父親が来たところで何にもならないだろうなと。

  その意味で、私にとって経費支弁者は父親ですが、
保護者は母親というのが感覚として、しっくりくるなと感じていました。

 

 さて、留学生です。
専門学校や大学の出願書類には経費支弁者を書く欄がありますが、
母親の名前を書くケースが少なくありません。
これはもちろん女性の社会進出が進み
職業を持つようになったことと大きく関係していると思われます。
それに加え特にアジア圏では女性は結婚後も仕事を続けたり、
そもそも家業を家族で営んでいたりするので当然かもしれません。 
それでも経費支弁者が母親だった場合、ついつい聞いてしまうのです。
「お父さんは働いていますか。」

 その答えも様々です。 
50代で既に第一線を引退しています。働いていません。交通事故で亡くなりました、などなど。

父親も仕事をしているのに母親の名前を敢えて書いてくる学生もいます。
そのような母親の多くは、会社経営者や会計士、医師など
社会的にも経済的にもある一定の地位を築いているケースが多いように思います。

 

父親が一家の大黒柱であるという認識に捕らわれていたのは、私でした。 

 

 そうなのです。
当然ですが、経費支弁者は父親でも母親でも、
経済的、社会的に信用があればどちらでも構わないのです。 

  

留学生の書類を見ながら、日本の社会に思いが至ります。

 

  日本は子どもの学費の責任を持つのは父親のケースが多いので、
経費支弁者は父親の名前を書く場合が多いですよね。 
高額な学費を賄うためにはそれに相当する収入が必要ですから、
今の日本では当然のことかもしれません。

でも、せめて保護者欄は堂々と母親の名前を書いてほしいと個人的には思います。
母親も学費を支えるためにパートに出ているかもしれません。
毎日お弁当を作って家族を支えているかもしれません。
子どもが複数いたら送り迎えだけで1日が終わっているかもしれません。
そんな母親も当然、子どもの保護者です。
経済的には独立していないかもしれませんが、責任が持てる大人です。

 

たくましい母親たちに敬意をこめて。

mother
                                               

「学費は、母が払います。」