中国からの留学生のほとんどの目標は大学進学です。
入学時のインタビューテストでは、たとえ初級であろうとまっすぐ私の目を見て
「ダイガクニ イキタイデス」とキッパリ。
「そうですか。何を勉強したいですか。」
「まだ、わかりません。」
「あ、そうですか。」
「行きたい大学はありますか」
「わ〇〇大学です」「東京〇〇大学です」
…・あ、そうなんですね。いわゆる日本の最難関校をはじめ有名大学の名前が挙がります。
当初は彼らの決意表明の明確さと志望校の高さに面食らったものですが、
今は進学希望の意思確認という認識に落ち着きました。
今日は、そんな留学生の大学進学についてのお話です。
中国は人口が多くて競争が激しいのはもちろんなのですが、
大学入学制度がそもそも日本とは全く異なります。
1年に1回だけ行われる「高考」という全国共通試験の結果で
進学先が決められるのです。
本人が「決める」のではなくて、点数で「決められる」のです。
志望学科、志望校があったとしても、点数によって大学や学科が振り分けられますから、
当然希望通りの学校や学部に入れない学生も出てきます。
そんな学生は入学しても大学を休学したり退学したりして他の道を探りだすのです。
その選択肢のひとつが日本の大学に進学するということらしいのです。
(もちろん、最初から日本の大学進学を目指して
高校生のときから準備をしている学生も大勢いますし、
アメリカやイギリスなど他の国へ留学する人もいます。)
今度こそ希望の大学で希望の学部に進学するのだ!
と意気込んで留学するのですが、
いざ受験となると日本の大学の入試制度に苦しみます。
留学生は「私費留学生入試制度」を利用して試験を受けるのですが、
ほとんどの大学が「志望理由書」の提出と「面接」を課しています。
まあ、当然ですよね。なぜうちの大学で学びたいのか。
留学生の希望と大学の提供する学問が一致するのか
お互いに納得の上で大学生活を始めるべきですから。
ところが留学生にとってこれが難しいのです。
志望理由を聞くと「有名です」「いい大学ですから」などと答えます。
はじめは冗談かと思いました。それらは堂々と口に出すことではありません。
有名とか偏差値が高いからとか親が勧めたからなどの理由は
本音過ぎて当然秘めておくべき理由なのです。
そこで我々日本語教師、お助けマンが登場です。
とはいえ教師がすべてを教えるのではありません。
学生に考えさせるのです。
大学のHPを隅から隅まで読ませ、
大学の特徴を探り、学科で学べることを調べて、
ほんとうにあなたのやりたいことがこの学校でできますか?
この大学のどんなところが魅力的ですか?
オープンキャンパスに行って話を聞いてきてください、などなど。
時間はかかりますし、ピンと外れな答えが返ってくることもあります。
それでも私たちはこのプロセスを省略しません。
せっかく自分の国を飛び出して、自由に大学を選べる日本に来たのです。
日本の大学は勉強さえすれば、誰にでも門戸を開いています。
国籍、住所、性別、年齢、親の職業などを問いません。
これってかなり公平なシステムではないでしょうか。
だからこそ真剣に進学先を選んでほしいのです。
留学生が最終的に自分らしい大学を選んで進学していく時、
わたしは心からうれしく思います。
みんな、よくやった。自分の進路を真剣に考えた結果だね。
青山の廊下には「今年の進学先」として、いろいろな学校名がズラリと並んでいます。
わたしには、そのひとつひとつがどれも同じように眩しく輝いて見えてなりません。
「〇〇大学はユウメイですから」
※中国の入試制度については2023年9月現在の情報
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