夏が来た。 

さっそくビーさん(ビーチサンダルのことです)履こう! 
と意気込むのはどうやら日本人の発想のようです。

南の国から来た留学生たちは春、秋、(さすがに冬は履きませんが)
かなり長い期間、サンダルで通学してきます。
背格好も日本人と同じくらいで、黒髪、黒い瞳も同じ。 
一見、日本人と同じようですが何かが違う。
どこが違うかというと足元のサンダルなんです。
今日はそんな足元のお話です。

  日本語学校には当然制服はありませんから、
服装に関しては厳格なルールは設けていません。
まあ、常識の範囲での服装をしてくることを望んでいるわけですが、
学校にサンダル履きというのは、何となく違和感を抱いてしまいます。

  昔から高温多湿の日本の夏には草履やつっかけなど
気候にふさわしい履物があったわけですが、
私たちの感覚では、学校に履いていくものは靴。
スニーカーやスリッポンなどつま先やかかとが隠れているものを履くのが
一般的だという認識があると思います。
それはもちろん制服としての靴の指定があるからなのですが、
制服がない学校でも感覚的には同じではないでしょうか。

  サンダルを履いていくのは自宅近所への買い物や海辺のレジャー、など
プライベートな場所での利用が多いと思います。 

よく温泉旅館やホテルではスリッパ履きは浴衣とセットで、
どこで使用が許されるか指示がありますが、あれはつまり、
スリッパという特別な履物を履いて行っていい場所とそうでない場所がありますよという
線引きをしているということになります。

ホテル内の格式高いレストランやリゾート施設の一流レストランでは
「サンダルでのご入場はご遠慮ください」
と明記してありますから、
一般的なドレスコードとしてもサンダルはカジュアルな履物ということになります。


  学校という、一応フォーマルな場所に、それではなぜ彼らはサンダル履きで来るのでしょうか。

ということで聞いてみました。
「どうしてサンダルを履いていますか。」 
答えは「暑いですから」「国でいつも履いていますから」などが多かったです。 
そんな中、中級クラスのある学生が詳しく説明してくれました。
「私の国では、突然雨が降って道がびちょびちょになってしまいます。
靴が濡れてしまいますから、サンダルをいつも履いているんです」
「ほお、なるほど…。」
確かに、地域によっては突然のスコールで濡れたかと思うと、
急に晴れ間が出ますから、天候と共存するためには足元はサンダルが正解でしょう。 
なるほどなるほど。 単に楽だから、暑いから、というだけはなく、生活術のようなものなのですね。

  そして日本。 亜熱帯地方のようなスコールはありませんが、
最近の異常な暑さでは足元も蒸れてしまいます。
スーツを着込んでいる男性も心の底では
「サンダル履きたい・・・」と思っているのかもしれません。 
でも、職場にサンダルはやはり「くだけすぎている」とも思います。
なんだか自宅で仕事しているような気分を自分にも相手にも与えてしまう恐れもあります。 
(ちなみに私たちの学校では、夏場でもストラップのないサンダルは禁止です。
なぜなら避難誘導ができないから。) 

  そんなリラックスムード満開の留学生も
入学式や卒業式などの式典ではスーツに革靴でビシッと決めてきますし、
面接の場合ももちろんスーツにネクタイ、革靴で臨みます。
TPOに応じた服装ができればよいのではないかな、というのが私自身の考えです。 
周囲に不快感を与えず、かつ自分自身も快適なリラックスできる服装で勉強してほしいと思います。

  南国の生徒さんにサンダル履きの理由を教えてもらった日から、
その人の背景を理解することは大切だなあと思うようになりました。
「今ここ」の私の感覚や考えと違うことには、何かその人なりの理由や背景があるに違いありません。

  沖縄では、かりゆしウェアが正装として定着していますが、うらやましい限りです。
東京の夏ももはや南国レベル。
涼し気なかりゆしウェアのような服装が日本全国で正装になるのは夢でしょうか。

 

 「それでもやっぱりスニーカー」
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